花粉症治療「舌下免疫療法」とは?薬の効果や治療期間、費用など気になるアレコレを解説!

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「舌下免疫療法は危険って本当?」
「舌下免疫療法のデメリットは?」

上記のように、舌下免疫療法に対して疑問や心配がある方は少なくありません。この記事では、以下について解説します。

  • 舌下免疫療法のメリット・デメリット
  • 舌下免疫療法のお薬の特徴
  • 治療の流れと費用
  • よくある質問

ぜひ舌下免疫療法を受けるか決める際の参考にしてください。

花粉症治療「舌下免疫療法」とは

花粉治療には皮下免疫療法と舌下免疫療法があります。どちらもアレルゲン免疫療法(減感作療法)の一種です。皮下免疫療法では、アレルギーの原因となるアレルゲンを含んだ治療薬を、注射で体内に注入します。

舌下免疫療法は近年開発された治療法です。舌の下に治療薬を置き、アレルゲンを少しずつ体内に入れることで、アレルギー反応を弱めます。

舌下免疫療法が今注目されている理由

花粉症の方は多くの場合、点鼻薬や内服薬などを使用して症状に対処します。そういった対症療法は、発症した症状を抑える治療法です。

舌下免疫療法は対症療法とは異なり、アレルギー症状が出にくいように根本から改善する治療法です。現在ではスギ花粉症を根本的に治せる唯一の治療法として、注目を集めています。自宅で治療を受けられるのも特徴です。

花粉症治療「舌下免疫療法」の効果とは

舌下免疫療法で改善できる症状

・くしゃみや鼻水、鼻づまりの改善
・目のかゆみや涙目の改善
・生活の質(QOL)の改善
・アレルギー治療薬の減量

長期間の治療が必要な舌下免疫療法を正しく続けることで、上記のようなアレルギー症状を改善する効果が期待できます。なかには、お薬がなくても長期間花粉症症状が出なくなる人もいます。

効果には個人差があり、10〜20%の人には期待される効果が出ないことがあります。症状の軽減・改善を感じられる人の割合は80〜90%です。

花粉症治療「舌下免疫療法」の治療期間
いつからいつまで薬を飲む必要がある?

舌下免疫療法の治療期間は、最低3年間です。治療期間中にまったく効果が出ないわけではありません。現在舌下免疫療法で使用されているシダキュアの場合、治療の効果は治療を開始後3ヶ月ほどで出始め、1回目の飛散シーズンから改善を感じられることが多いです。

治療中は2週間〜1ヶ月に1回の通院が必要です。治療を4〜5年継続すると、治療を止めてから7〜8年程度、長期間効果が持続することが期待できます。

スギ花粉症治療「舌下免疫療法」のメリット

スギ花粉症治療「舌下免疫療法」のメリット_画像

スギ花粉症を唯一根本的に治療できる舌下免疫療法は、治療を受けた8〜9割の方にアレルギー症状の軽減が見られます。効果が出る確率の高さのほかにも、舌下免疫療法は他の治療法に比べて優れている点が多くあります。

この項目では、舌下免疫療法のメリットを4つ確認していきましょう。

メリット1:アレルギー症状そのものを改善する

一般的な花粉症治療では、すでに出ているアレルギー症状を抑えるための治療薬を使用します。舌下免疫療法は、アレルゲンを体内に少しずつ入れることで、アレルギー症状自体を根本的に改善します。

現段階での舌下免疫療法は、スギ花粉症を根本的に治療できる唯一の方法です。発症しても軽度で済み、花粉症のお薬の量を減らせたり、そもそも症状自体が現れないようにすることを期待できます。

メリット2:自宅で治療ができる

自宅で治療できる点も舌下免疫療法のメリットです。舌下免疫療法と同じくアレルゲン免疫療法の皮下免疫療法では、注射を使用するためはじめのうちは週に2回通院しなくてはなりません。週に1回、2週に1回と少しずつ期間が伸びていき、最終的に月に1回の通院になります。

舌下免疫療法は初回を除き、月に1回程度の通院で済みます。毎日の服用は自宅でできるため、通院の手間が少なく日常生活に支障を来さないのも特徴です。

参考:curon 医療機関向け「舌下免疫療法のメリット・デメリットは?効果や副作用についてまとめ」

メリット3:保険適用の治療である

舌下免疫療法は保険適用の治療です。全体の治療費の3割負担となる方が多く、費用を抑えて花粉症治療ができます。3割負担の方が舌下免疫療法でスギ花粉症の治療をする場合、1ヶ月の負担額の平均は1,800円程度です。

保険適用を受ける場合、保険証が必要になるため、通院の際は忘れないようにしましょう。より費用を抑えるためには、通院するクリニックの診察料や処方箋料などを確認しておくと良いですよ。

メリット4:5歳以上の子供でも治療できる

舌下免疫療法は、5歳以上であれば子供でも治療を受けられます。シダキュアを用いた舌下免疫療法の治療対象年齢は5歳以上65歳未満で、小さな子供の場合、治療可能かどうかは医師の診断により決定されます。

舌下免疫療法は舌の下にお薬を置いて、時間を置いてから飲み込む必要がある治療法です。正しい飲み方ができなくては治療効果が得られないため、5歳以上でも治療不可となる場合があることを知っておきましょう。

スギ花粉症治療「舌下免疫療法」のデメリット

スギ花粉症を唯一根本的に治せる舌下免疫療法には、どのようなデメリットがあるのでしょうか?

舌下免疫療法を受けるか決める際は、事前にデメリットを知っておき、よく考えて決めることが大切です。

この項目では、舌下免疫療法のデメリットを詳しくご紹介します。

デメリット1:長期間の治療を続ける必要がある

舌下免疫療法のデメリットは、長期間の治療が必要なことです。世界保健機構(WHO)で推奨されている治療期間は3〜5年であり、15歳から治療をはじめると18歳〜20歳まで治療を続ける必要があります。

その後は治療薬を服用しなくなっても6〜8年程度効果が持続します。治療期間が長いほど持続期間も長くなるため、治療のやめ時は医師と相談して決めましょう。

デメリット2:副作用が起こることがある

舌下免疫療法は副作用が少ない治療法ですが、まったく起こらないわけではありません。舌下免疫療法では5%以上の頻度で次の副作用がおきる可能性があります。

  • 口内のかゆみ・不快感
  • 口内や口周辺の腫れやむくみ
  • 口内炎
  • かゆみ
  • のどの違和感

1〜5%の頻度では鼻水やのどの痛み、涙などが現れ、1%未満のごく少ない頻度では吐き気や嘔吐、腹痛や咳といった症状が現れます。

注意が必要な重篤な副作用とは

舌下免疫療法の重大な副作用にはアナフィラキシーショックがあります。アナフィラキシーショックが起こる可能性はまれですが、以下の症状が現れます。

  • 蕁麻疹や発疹といった皮膚症状
  • 喘息のような呼吸困難
  • 嘔吐や吐き気
  • 腹痛や下痢
  • 血圧の低下
  • 意識の混濁

上記の症状が現れた際には、早急に医療機関で診断・治療を受ける必要があります。

デメリット3:治療が受けられない人がいる

スギ花粉症と診断されていても、舌下免疫療法はすべての人が受けられるわけではありません。以下に該当する人は舌下免疫療法を受けられないため、確認しておきましょう。

  • 5歳未満の子供や65歳以上の高齢者
  • 重症気管支喘息の方
  • 妊婦や授乳中の方
  • 悪性腫瘍、免疫不全患者の方
  • 全身性ステロイド薬を使用中の方
  • 非選択的β遮断薬を使用中の方

ほかにも口内に傷がある方や高血圧の方なども治療を受けられない可能性があります。

スギ花粉症治療「舌下免疫療法」の子供へのデメリット

舌下免疫療法で改善できる症状

・服用前後2時間は激しい運動・入浴が禁止
・長期にわたって服用が必要
・薬を舌の上に1分間置けないと治療不可

舌下免疫療法は服用前後の行動制限や服用時のルールがあり、子供にはルールを守ることが難しい可能性があります。お子様に舌下免疫療法を受けさせたい場合、医師に不安な点はきちんと相談しましょう。

舌下免疫療法は長期間の服用が必要なため、保護者の方も根気よく子供とお薬と向き合うことが必要です。医師に相談しながら、正しく治療をしましょう。

スギ花粉症治療「舌下免疫療法」で使われる薬は?

 シダキュア シダトレン 製品種類 2,000JAU 5,000JAU 200JAU/mL 2,000JAU/mL 用法 舌下で1分保持 舌下で2分保持 通院頻度 4週に1回 4週に1回 発売時期 2018年 2014年 対象年齢 5〜65歳 12〜65歳 保管方法 常温 冷所(2〜9度)

スギ花粉症の舌下免疫療法で使用される治療薬には、「シダキュア」と「シダトレン」があります。シダトレンは2014年に発売され、シダキュアは2018年に発売されました。

シダトレンは2021年3月31日にて販売終了となっており、代替品として現在舌下免疫療法で広く使用されているのはシダキュアです。

シダトレインとシダキュアの違いとは

シダキュアは舌の下で1分保持すれば飲み込めますが、シダトレンは2分保持する必要があります。子供にとって1分の差は大きいでしょう。治療対象年齢も異なり、シダトレンは対象年齢が12歳からなのに対して、シダキュアは5歳から服用できます。

またシダトレンは液体のため冷所保存が必要で持ち運びが難しく、シダキュアの方が利便性は高いでしょう。

花粉症治療「舌下免疫療法」の費用

舌下免疫療法は治療期間が長く、費用面に心配がある方も少なくないことでしょう。新しいお薬は薬価が高いことも珍しくありません。

しかし2014年に発売されたシダトレンと、2018年に発売されたシダキュアの薬価はほとんど同じです。舌下免疫療法でかかる費用を詳しくみていきましょう。

舌下免疫療法は3割負担で治療できる

舌下免疫療法は保険適用が可能です。お薬代の負担は3割負担となり、1ヶ月の費用平均1,800〜2,300円程度です。ここに病院ごとの診察料と処方箋料が別途かかります。費用を抑えたい場合は、料金表示が明瞭なクリニックを探すようにしましょう。

参考:curon 医療機関向け「舌下免疫療法のメリット・デメリットは?効果や副作用についてまとめ」

子供は子ども医療費助成の対象になる

舌下免疫療法は保険適用の治療のため、15歳(中学3年生)までは子ども医療費助成の対象です。子ども医療費助成を利用することで、実質負担なし(無料)で舌下免疫療法を受けられます。

子ども医療費助成の適用には、乳幼児・子ども医療証が必要です。これは居住地域の自治体に申請して発行してもらう必要があります。

アレルギー検査も保険適用ができる

舌下免疫療法を受ける際のアレルギー検査は保険適用が可能です。病院・クリニックによって費用は異なりますが、スギやヒノキ・イネ科のアレルギー検査費用は1,800円程度となる場合が多いです。ほかにも多くのアレルゲンを検査する場合は、保険適用でも4,000〜6,000円程度の検査費用がかかります。

結果的に治療費の総額はいくらくらい?

舌下免疫療法でかかる費用総額は8万円程度です。最初に行うアレルギー検査を5,000円とし、毎月の薬代を2,000円で計算して3年続けると78,000円になります。ここに診察料と処方箋料がかかりますので、クリニックで確認しておきましょう。

舌下免疫療法の治療の流れ

舌下免疫療法を受ける際に、どのような流れになるのか疑問な方も多いのではないでしょうか?この項目では、舌下免疫療法の治療の流れを確認しましょう。

1.初診

初診では、舌下免疫療法の説明やアレルギー検査を受けます。舌下免疫療法が適応か治療の意志があるかを確認し、採血検査を実施します。舌下免疫療法の同意書を渡されますが、次回診察時に必要になるため大切に保管しましょう。

2.診察2回目

前回のアレルギー検査の結果を確認し、同意書にサインをしたら初回投与がはじまります。初回投与は副作用が現れる可能性を考え院内で行われており、服用後30分間は院内で過ごす必要があります。

3.毎日の服用

1日1回舌の下に治療薬を1分間保持し、その後飲み込みます。その後5分間はうがいや飲食を控えましょう。飲むタイミングは起床後すぐや午前中が望ましいです。服用前後2時間は激しい運動や入浴、アルコールの摂取などは控えましょう。

4.再診(1週間後)

初診から1週間後に再診があります。診察では口の中に腫れがないかや、かゆみや違和感といった副作用の有無を確認します。問題がなければ舌下錠を2週間分処方され、3回目の通院は終了です。

5.再診(2週間後)

処方された治療薬がなくなる2週間後までに、もう一度通院します。薬のアレルゲン含有量が増えているため、副作用の発現有無を確認し、問題がなければ舌下錠4週間分を処方され、以後は4週間おきの通院になります。

舌下免疫療法のよくある質問

・舌下免疫療法は途中でやめられる?
・舌下免疫療法は危なくない?
・舌下免疫療法を受けた人の体験談は?

舌下免疫療法は途中でやめられる?

舌下免疫療法は途中でやめると、治療が最初からやり直しになります。やめることはできますが、自己判断ではなく医師に相談のうえ決定しましょう。やめた後自己判断で再開すると、副作用の危険性も高くなります。飲み忘れた場合も焦らず医師に確認することが大切です。

舌下免疫療法は危なくない?

舌下免疫療法は非常にまれにアナフィラキシーショックを起こす場合があります。アナフィラキシーショックは重大な副作用として医療機関も警戒しており、初回は院内で服用するといった対処がされています。シダキュアは副作用が少ないとされていますが、可能性がまったくないわけではないため注意しましょう。

舌下免疫療法の体験談は?

舌下免疫療法を受けた5歳の男の子は、夜寝る前に鼻水でむせて咳こんでしまうため治療をはじめたそうですが、寝る前に咳こまず熟睡できるまで改善されているそうです。5歳のお子様でも治療できますか?という質問には「できると思います!」と前向きな回答が見られました。

【まとめ】舌下免疫療法をより詳しく知りたい方はクリニックの受診を

この記事では、舌下免疫療法のメリットやデメリット、よくある質問などを解説してきました。

舌下免疫療法はスギ花粉症を根本から治せる唯一の治療法で、5歳から治療を受けられます。

副作用や治療期間などのデメリットを理解して、治療を決めることが大切です。舌下免疫療法についてさらに詳しく知りたい方は、医療機関で相談してみましょう。

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