がん治療は、「第5のがん治療」として最先端の治療があることをご存じでしょうか。
日本発のがん治療は、いまや世界中で研究が進めれており、今後ますますがん治療に期待が持てるようになると考えられています。
これまで治療が困難だったがんも、最先端の治療が適用されれば治療できる可能性があるのです。
現在、最先端のがん治療には、どのような治療法があるのかについて、詳しく解説します。
最先端のがん治療の特徴や費用を比較一覧
施術 | 光免疫治療 | 免疫治療薬 「オプジーボ」 |
重粒子線治療 |
---|---|---|---|
治療法 | 近赤外線に反応する がん細胞だけ破壊 |
T細胞とPD-L1の結合を 阻害してT細胞の 免疫反応を持続 |
がんに狙いを定めて 炭素粒子を照射する |
効果 | がん細胞だけを 破壊 免疫細胞で がんを攻撃 |
免疫力を 回復させる 免疫力の攻撃力を 高める |
がんに照射が 届きやすい 副作用が 出にくい |
注意点 | 治療後4週間は 直射日光を避ける |
副作用が出る 可能性がある |
持病や副作用への 考慮 |
対象となるがんの種類 | 切除不能な 局所進行がん 頭頚部がん |
7種類 | 15種類 |
平均費用 (1回あたり) |
約700万円 | 約130万円 | 約300万円 |
詳細 |
※2024年5月現在
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最先端のがん治療「光免疫治療」とは
〜がんだけを破壊する第5のがん治療〜
光免疫治療法は、2020年9月に世界で初めて日本で承認されました。
現在は、切除不能な局所進行、または局所再発の頭頚部がんの治療のみ、健康保険が適用されています。
近年もっとも注目されている世界最先端のがん治療方法で、手術療法・化学療法・放射線療法・免疫療法に続いて「第5のがん治療」と呼ばれています。
最先端のがん治療「光免疫治療」の仕組み
光免疫治療では、体内のがん細胞の表面に付着する光増感剤を、注射や点滴で投与します。
増感剤を活性化させる光を照射すると、がん細胞にとって有毒な酸素が生み出されることにより、がん細胞を消失させる治療法です。
何度も繰り返すことで、がんの完全消滅が期待でき、光増感剤は健康な細胞には付着しないため、がん細胞だけを狙った治療ができる特徴があります。
参考:光治療(光免疫療法)|北青山Dクリニック
最先端のがん治療「光免疫治療」の効果
がん細胞だけを攻撃できる効果があることから、副作用が少なく患者に負担がかかりにくい特徴があります。
がんの状態を把握した適切な光免疫治療では、薬剤の選定など様々な要因から考えると、治療方法やがんのステージにも高い効果が得られると考えられているのです。
ここでは、光免疫治療における3つの効果について解説します。
体への負担が少ない
体内に入った薬剤は、がん細胞だけに集積されるため、健康な細胞を傷つけることがありません。
そのため手術療法や放射線療法、薬物療法などのがん治療と比較すると、がん細胞のみを攻撃する光免疫治療は副作用が少ない特徴があるのです。
近赤外線を体の表面に照射する治療なので、複数回の治療も患者に負担がかかりにくく、がん細胞を死滅させる効果が期待できます。
参考:癌(がん)の光免疫療法|大阪がんクリニック
全身治療にも効果が期待できる
光免疫療法では、がんを攻撃しても付近の免疫細胞の働きは抑制しないため、元気な免疫細胞が維持できるようになります。
がん細胞を破壊すると、がん細胞から抗原が放出されますが、攻撃力のある免疫細胞があれば、がん細胞の目印となる抗原を認識し、がん細胞に対する免疫機能が活発化される効果があるのです。
この効果を「アブスコパル効果」と呼び、局所治療だけでなく遠隔治療として全身治療の2つが期待できる、両方の要素を兼ね備えたがんの治療方法であると考えられています。
参考:がん光免疫療法|東京月島クリニック
末期がんや難治性がんにも有効性が確認されている
全身治療にも期待できる光免疫治療は、がんのステージに関係なく適用でき、末期がんや難治性がんに対しても効果を発揮する可能性があります。
体中にがん細胞が広がってしまうと、これまでは治療法がないと言われたり、緩和ケアを勧められたりすることが多くありました。
しかし、ステージ4のがんや高齢者でも、体への負担が少ない治療ができることから、これまでになかったがん治療として高い期待が持たれています。
参考:がんに関する情報まとめ|大阪がんクリニック
最先端のがん治療「光免疫治療」の注意点
近年、最先端のがん治療として注目されている「光免疫治療」は、効果が期待できる反面、注意しておくべきポイントがあります。
高い効果と低いリスクとして、メリットの大きい光免疫治療にも、副作用などのデメリットがあるのです。
また、高額な治療費となってしまう恐れもあるため、がんの治療法として検討する際は、3つの注意点についてよく理解しておかなければなりません。
副作用が起こることがある
光免疫治療では、他のがん治療法に比べると副作用は少ない傾向ですが、完全に副作用がないとは言えず、まれに発生することがあるので、注意しておきましょう。
副作用の種類には、以下のようなものがあります。
- 悪心や吐き気
- 発熱
- アナフィラキシーショック
- アレルギー反応
- 皮下出血
- 血管痛
- 光線過敏症 など
光免疫治療を受けるときには、こうした副作用があることを理解し、もし治療を受けたときに気になる症状が現れたときには、すぐに受診し医師に相談するようにしてください。
参考:癌(がん)の光免疫療法|大阪がんクリニック
術後は直射日光を避ける必要がある
副作用によって「光線過敏症」を発症する可能性があることから、治療直後は一定期間入院になる可能性があります。
術後の光線過敏症では、強い光が当たると皮膚炎を起こしてしまうため、次のようなことを避けなければなりません。
- 直射日光を浴びる
- 強い室内照明を浴びる
これは、数少ない光免疫療法のデメリットとも言え、副作用の可能性があれば入院が必要となってしまうのです。
参考:光治療(光免疫療法)|北青山Dクリニック
保険適用ができない場合がある
がん治療の最先端を進む「光免疫療法」ですが、治療費は健康保険が適用にならないケースもあるため、高額になってしまうケースがあります。
現在、健康保険が適用されるのは「切除不能な局所進行または局所再発の頭頚部がん」のみであり、切除可能ながん治療は自由診療として、全額自己負担となってしまうのです。
健康保険が適用されない場合、2クール目には400万円を超えると言われており、患者や家族の経済的な負担は非常に大きなものだと言えます。
光免疫療法を検討するときは、保険適用されるのか、治療費用はどれくらい必要なのかなど、事前の確認が大切です。
参考:がん光免疫治療の費用|福岡天神がんクリニック
最先端のがん治療「光免疫療法」の治療スケジュール
画像引用:名古屋がん中央クリニック
がん細胞を選択して狙い撃ちにする光免疫療法のスケジュールは、次のようにおこなわれます。
Step1 光感受性物質「ステルスリポソーム」の注入
がん細胞のまわりには、新生血管が多くありますが、「ステルスリポソーム」は、血管の壁にある隙間をすり抜けてがん細胞に到達します。(EPR効果)
Step2 ステルスリポソームとがん細胞胞膜が結合
がん細胞の表面にある胞膜にステルスリポソームが付着し、がん細胞に光感受性物質が含まれ、少しずつ蓄積されていきます。
Step3 光を照射してがん細胞を消滅
がん細胞に十分蓄積されたことを確認し、光感受性物質のみに反応する光を照射すると化学反応を起こし、がんにとって有毒な活性酸素が発生することでがん細胞を消滅させます。
Step4 免疫細胞が離れたがん細胞も攻撃
がん細胞を死滅させるときに抗原の特徴を覚えた免疫細胞が体中を巡るため、光の照射部位から離れたがん細胞も攻撃します。そのため遠隔転移があってもがん治療が可能となるのです。
最先端のがん治療「光免疫療法」の対象となるがんの種類
近年注目されている光免疫療法が適用されるがん治療は、現時点では「切除不能な局所進行または局所再発の頭頚部がん」となっています。
適用されるがんの種類には、各部位で以下のような病名があげられます。
頭頚部 | ・喉頭がん ・口腔がん ・舌がん ・甲状腺がん ・喉頭がん |
---|---|
胸部 | ・肺がん ・小細胞肺がん ・乳がん |
肝臓/胆のう/膵臓 | ・肝臓がん ・胆道がん ・膵臓がん |
消化器 | ・食道がん ・胃がん ・大腸がん |
泌尿器 | ・腎臓がん ・膀胱がん ・前立腺がん |
女性特有 | ・子宮頸がん ・子宮体がん ・卵巣がん |
全身 | ・メラノーマ ・原発が不明ながん |
※2024年5月現在
脳腫瘍や骨腫瘍などレーザーが届きにくい部位のがんは適用外となっており、白血病など未承認のがんへ光免疫療法は可能ですが、保険が適用されず高額な治療費が必要です。
参考:がん光免疫治療の効果|福岡天神がんクリニック
最先端のがん治療「免疫治療薬」とは
〜ノーベル賞を受賞したオプジーボ〜
近年、最先端のがん治療と呼ばれる「免疫療法」は、2018年にノーベル医学・生理学賞を受賞したことがきっかけとなり、免疫チェックポイント阻害薬「オプジーボ」が注目を集めました。
オプジーボは、従来のがん治療で用いられていた抗がん薬や分子標的薬、ホルモン薬などと異なり、切除不能な進行・再発の非小細胞肺がんに対して効果が見込める新しいタイプの薬剤です。
世界で初めて承認された日本発の免疫チェックポイント阻害薬は、従来のがん治療とは異なるメカニズムで治療できるため、世界中で開発が進められています。
最先端のがん治療「免疫治療薬(オプジーボ)」の仕組み
画像引用:井上病院
人の体内にある「T細胞」の役割は、ウイルスや細菌などへの攻撃です。
しかし、T細胞が働きが強すぎると正常な細胞を破壊してしまうため、T細胞の表面にはPD-1と呼ばれるタンパク質があり、T細胞の働きすぎを抑える信号を出して調整しています。
がん細胞はこの仕組みを利用し、がん細胞表面にあるPD-L1をT細胞のPD-1に結合させて、T細胞の攻撃にブレーキをかけてしまうのです。
免疫チェックポイント阻害薬のオプジーボは、T細胞表面のPD-1に結合し、がん細胞のPD-L1と結合させないようにすることで、しっかりがん細胞を攻撃させる仕組みを持っています。
参考:今話題の免疫に関する肺がん治療薬、オプジーボ|井上病院
最先端のがん治療「免疫治療薬(オプジーボ)」の効果
がん治療には、自己免疫に働きかける有効な「免疫療法」があり、第4のがん治療法と呼ばれています。
高い治療効果が期待できる免疫療法では、免疫チェックポイント阻害薬を用いる治療法があり、その1つがオプジーボです。
単独で使用するだけでも多くのがん種に対して高い有効が認められていますが、オプジーボを中心とした治療の幅を広げることで、より治療効果が見込めると考えられています。
以下では、免疫治療薬「オブジーボ」の効果について紹介します。
多くのがん種に対して有効
免疫チェックポイント阻害薬「オプジーボ」は、本来体の中にある免疫細胞(T細胞)が、がん細胞の持つ作用によって攻撃力を抑えられてしまうことを防ぐ仕組みを持っています。
がん細胞への攻撃力を高める効果があるため、オプジーボは多くのがん種類に対して有効だと言われているのです。
ただし、自己免疫疾患を発症したなど過去の病歴や治療によっては、オプジーボによる治療を受けられない場合もあり、誰でも利用できるがん治療とは言えないため、注意しておきましょう。
参考:オプジーボとは?効果やデメリットなど解説|セントラルメディカルクラブ世田谷
水素ガスとの併用で生存率に期待が持てる
オブジーボは水素ガスを併用することで、免疫力を活性化させられるため、免疫力が低下しているがん患者にも高い効果が期待できると言われています。
免疫が元気なら、末期がんにも効果があるオブジーボですが、そもそも活性化させられる免疫がない状態だと、オブジーボが高い効果を発揮できないのです。
抗がん剤治療などにより、働けない免疫になってしまっていても、水素ガスを併用すればオブジーボ単独で治療するよりも、生存率が約3倍に向上したというデータがあります。
参考:オプジーボは末期がんを治す夢の薬か?|くまもと免疫統合医療クリニック
光免疫療法との併用で相乗効果
オプジーボは、進行がんの治療で他の治療方法と併用すると、高い効果が期待できると言われており、なかでも最先端のがん治療「光免疫療法」との併用は相乗効果が高い傾向があります。
がん細胞により免疫の攻撃力を抑えられてしまうことを「オプジーボ治療」によって回避し、「光免疫療法」を併用することで、強い攻撃力を持った免疫が、がん細胞を死滅させてくれるのです。
多様ながんに効果のあるオプジーボは、光免疫療法によりがん細胞がダメージを受けることで、その効果を向上させると考えられています。
参考:免疫チェックポイント阻害薬「オプジーボ」の詳細解説とその効果|大阪がんクリニック
最先端のがん治療「免疫治療薬(オプジーボ)」の治療スケジュール
画像引用:四国がんセンター(呼吸器内科)
オプジーボによる治療は、14日間を1サイクルとして効果を見ながら繰り返しおこないます。
14日間のうち、オプジーボを投与するのは2回ですが、1回投与するごとに13日間の休薬期間が必要です。
すでに抗がん剤治療を受けたことがある場合、休薬期間を20日間に変更し、21日間を1サイクルとして投与が繰り返されるケースもあるので、治療を受ける際には治療スケジュールをしっかり確認しておきましょう。
最先端のがん治療「免疫治療薬(オプジーボ)」の注意点
オプジーボは、光免疫治療と併用することで、治療が難しいがんであっても高い効果が期待できる一方、多様な副作用が報告されています。
副作用は、投与から24時間以内に副作用が現れる可能性があり、放置すると重症化してしまう恐れがあるので注意してかなくてはなりません。
報告の多い副作用には、以下のような例があるので参考にしておいてください。
皮膚障害 | ・皮膚が白く変化 ・発疹 ・かゆみ ・脱毛 |
---|---|
肺障害 | ・強い息切れ ・咳の増加 ・発熱 ・倦怠感 |
肝障害/膵障害 | ・目が黄色くなる ・褐色の尿 ・倦怠感 ・吐き気 |
胃腸障害 | ・排便の増加 ・腹痛 ・赤や黒の便が出る ・吐き気や嘔吐 |
腎障害 | ・体のむくみ ・血圧の上昇 ・排尿困難 |
神経障害/筋障害 | ・手足のしびれ ・感覚障害 ・動作の異常 ・重症筋無力症(※1)※1 力が入らない、瞼が重い、手足のしびれ、二重に見える |
糖尿病 | ・血糖値の上昇(Ⅰ型糖尿病) ・劇症Ⅰ型糖尿病(※2)※2 倦怠感、多飲、多尿、口渇 |
内分泌障害 | ・下垂体機能低下症(※3) ・甲状腺機能低下症(※4) ・副腎機能障害(※5) ※3 倦怠感、脱力感、頭痛、幻覚 ※4 瞼のむくみ、寒がり、倦怠感、体重増加 ※5 動機、汗が多く出る、暑がり、体重減少 |
眼障害 | ・ぶどう膜炎(※6)
※6 目の充血、光が眩しい、目の痛み、視力低下、視界にもや |
その他 | ・アレルギー反応(※7)
※7 呼吸困難、かゆみ、発熱、悪寒、発疹、瞼や唇の腫れ |
副作用は人によって異なり、必ず同じ症状が出るとは限りません。
免疫チェックポイント阻害薬「オプジーボ」の治療を受け、投与前と異なる症状が現れたときには、すぐに医師へ相談するようにしておいてください。
参考:免疫チェックポイント阻害薬をご使用のお方へ|都立駒込病院
最先端のがん治療「免疫治療薬(オプジーボ)」の対象となるがんの種類
免疫治療薬「オブジーボ」の対象となるがんには、以下のような種類があります。
- メラノーマ(悪性黒色腫)
- 非小細胞肺がん
- 腎細胞がん
- ホジキンリンパ腫
- 頭頚部がん
- 胃がん
- 悪性胸膜中皮腫 など
これらは、従来のがん治療では難しい病状であり、オプジーボ治療により高い治療効果が示されています。
オプジーボにおいては、現在も臨床試験がおこなわれており、今後ますます治療適用範囲の拡大が期待されているのです。
参考:オプジーボとは?対象となるがんや副作用などについて分かりやすく解説|福岡同仁クリニック
自分に合った最先端のがん治療がわかる「免疫ラボ」がおすすめ
病院で伝えにくかったり、聞きにくかったりする疑問や悩みでも、豊富な知識と経験を持った専門コンサルタントに相談できるので、前向きな気持ちで治療を受けられるようになります。
人それぞれ最適な治療法は異なるため、相談者にあった治療を提案してもらえるので、固定観念を抜け出した治療法に気づける可能性があるのです。
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免疫ラボの利用の流れ
STEP.1:無料治療相談の予約
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免疫ラボの豊富な経験をもとに、治療方法を提案してもらえます。樹状細胞ワクチン療法や光免疫療法、NK活性療法など、幅広い治療方法のなかから、最適な治療プランをアドバイスしてくれます。
STEP.3:治療の申し込み・優先手配
提案された治療内容に納得すれば、必要書類(治療申込書・過去の治療関連資料・本人確認資料)を提出し申し込みます。治療費の支払いが終わると、免疫ラボによる優先的に医療機関免疫細胞培養施設の手配に進みます。
STEP.4:医療機関を訪問し治療開始
紹介された医療機関で院長面談を受けるとともに、免疫細胞を培養するための、血液検査や成分採血を受けます。なお、院長面談は対面だけでなくオンライン面談も可能です。
STEP.5:治療開始
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STEP.6:アフターサポート
追加治療や再発予防に関する検討など、疑問点があればいつでも免疫ラボのアフターフォローが受けられるので安心です。
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最先端のがん治療「重粒子線治療」とは
〜従来の放射線治療に抵抗性をもつ難治がんに有効〜
がんの先進医療技術による治療といえば「重粒子線治療」と言われるほど、国内で治療を検討するがん患者は多くなっています。
がん治療における放射線治療の1つで、光の速さのおよそ70%まで加速して重粒子線を体に照射する方法です。
現在、日本には重粒子線治療が受けられる医療機関は6カ所あり、日本発のがん治療技術として、1994年から2019年までの期間で約29万人以上が治療に成功しています。
ここからは、重粒子線治療の仕組みや効果などについて、詳しく解説していきます。
最先端のがん治療「重粒子線治療」の仕組み
重粒子線治療は、がん治療における光子線などのX線や陽子線と並ぶ放射線治療です。
陽子線で用いられる陽子と比べると、約12倍の質量を持つ炭素イオンを用いた治療となっています。
重粒子線治療では、がん細胞内のDNAにダメージを与えてがん細胞を死滅させますが、他の放射線治療よりも強い殺傷能力があり、難治性がんへの効果や照射回数が少なくてすむ特徴があります。
参考:重粒子線治療とは|神奈川県立がんセンター重粒子線治療施設
最先端のがん治療「重粒子線治療」の効果
がん治療における放射線治療のなかでも、重粒子線は特に高い効果があります。
ポイントを7つに絞って、陽子線治療やX線と比較してみると、効果の違いがよくわかるので参考にしてみてください。
放射能治療 | 重粒子線治療 | 陽子線治療 | X線治療 |
---|---|---|---|
線量の集中性 | 集中して がんに届く |
集中して がんに届く |
集中的に がんへ届かない |
線量分布の形状 | 鋭い | やや鋭い | なだらかに下降 |
殺傷能力 (X線基準) |
3 | 1.1 | 1 (基準) |
低酸素がん 治療効果 |
効果あり | 効果なし | 効果なし |
放射線抵抗性がん 治療効果 |
効果あり | 効果なし | 効果なし |
平均照射回数 | 12回 | 25回 | 25回 |
手術が難しい難治性がんの治療にも高い効果が期待できる重粒子線治療は、通院治療を選べます。
他の放射線治療と比べ、照射回数が格段に少なくなっていることも大きな特徴です。
参考:重粒子線治療の特徴|大阪重粒子線センター
最先端のがん治療「重粒子線治療」の注意点
重粒子線治療を受けるときには、3つの注意点があります。
治療前・治療中・治療後それぞれにおける注意ポイントがあり、確実な治療や予後の体調に大きくかかわることとなっています。
ここで紹介する内容は最低限の注意点ですが、病状により追加される場合があるので、医師の説明をしっかり聞いておきましょう。
治療計画時と同じ体内状況を保つ
重粒子線治療を受けるときには、体内状態を治療計画時とおなじ状況に保っておく必要があります。
治療計画は、治療箇所や病状に合わせて検討されていることから、体内状況が異なると効果が得にくいばかりか、副作用が出てしまう可能性が高まります。
治療前の確認で体内状況が変わっている場合は、一定期間絶食などの処置がおこなれる場合もあるのです。
参考:よくある質問|群馬大学医学部附属病院重粒子医学センター
治療中は動かない
治療中は、できるだけ動かないように注意しておきましょう。
体を動かしてしまうと、重粒子線が正確にがん細胞へ届かなくなってしまい、高い効果が見込めなくなってしまいます。
重粒子線治療を受ける患者は、事前に固定具を作ることになるので、位置を合わせたら専用の枕や固定具を使って固定しますが、固定に対して不安を感じるひとは事前に医師へ相談しておきましょう。
参考:受診から診療までの流れ|大阪重粒子センター
少なからず副作用がある
従来の放射線治療に比べ、はるかに副作用は少なくなりましたが、重粒子線治療においても、まったく副作用がないわけではありません。
重粒子線治療の副作用は、照射部位によって異なるため、がんの種類ごとに違うと言えます
がんの種類 | 副作用 |
---|---|
頭頚部がん | ・皮膚炎 ・粘膜炎 ・口腔粘膜炎 ・顎骨壊死※ ・視力障害※ ・聴力障害※ |
肺がん | ・皮膚炎 ・放射線肺臓炎 ・肋骨骨折 |
食道がん | ・食道炎 ・胃炎 ・気管支炎 ・皮膚炎 |
肝臓がん | ・皮膚炎 ・消化管出血 ・肋骨骨折 |
腎臓がん | ・血液毒性 ・食欲不振 ・消化管潰瘍や出血 ・血尿 ・腫潰内感染 |
膵臓がん | ・食欲不振 ・悪心 ・下痢 |
大腸がん術後局所再発 | ・足の神経障害 ・骨盤部の骨折 ・難治性潰瘍や出血 |
子宮がん | ・排尿障害 ・神経障害 ・更年期症状 |
前立腺がん | ・頻尿 ・尿意圧迫感 ・直腸出血※ ・血尿※ |
骨軟部腫瘍 | ・皮膚炎 ・骨折 ・神経麻痺 |
※晩期副作用として発現する可能性があり、回復が困難な傾向があると言われている
参考:重粒子線で治療できるがん|大阪重粒子線センター
最先端のがん治療「重粒子線治療」の治療スケジュール
画像引用:神奈川県立がんセンター重粒子線治療施設
重粒子線治療は、以下のようなスケジュールでおこなわれることが一般的です。
Step1 担当医への相談
がん重粒子線治療ができる医療機関は、国内でも限らているため紹介状を書いてもらう必要があります。担当医に相談し、書いてもらった紹介状を持って重粒子線治療専門の医療機関を受診しましょう。
Step2 固定具の作成
治療時には、照射部位へ正確に照射するため固定具の装着が必要です。そのため、患者の体系に合わせた特製の固定具を作成します。
Step4 CTやMRIでシミュレーション
作成した固定具を使って、CTやMRIで治療時のシミュレーションを実施します。照射角度や放射線量を調整し、病状から照射回数を検討するなど、治療の準備が進んでいきます。
Step5 重粒子線治療の当日
当日は、治療計画に沿って重粒子線治療がおこなわれます。複数回おこなわれる治療では、毎回厳密に位置を確認して調整し、レントゲンにより照射部位を確認しながら、重粒子線を照射します。
Step6 治療後の経過観察
重粒子線治療の予定照射回数をすべて終えると、医師の判断により紹介元の病院のもとで、経過観察をおこなう場合があります。紹介元の病院と共に画像検査や採血を継続し、治療効果や副作用の観察をおこないます。
参考:重粒子線治療とは?費用・デメリット・保険適応など解説
最先端のがん治療「重粒子線治療」の対象となるがんの種類
重粒子線治療では、幅広いがんの治療が可能です。
限局性の固形がんの治療に適しており、以下のようながんの種類があるので参考にしてみてください。
がんの種類によって治療回数も変わるので、合わせて治療の目安回数を紹介します。
がんの種類 | 重粒子線治療 対象 |
治療回数 (目安) |
---|---|---|
頭頚部骨軟部腫瘍 | ・骨肉腫、軟部肉腫など ・脊索腫、軟骨肉腫など |
16回 |
頭頚部がん | ・非扁平上がん ・粘膜悪性黒色腫 ・副鼻腔や聴器から発生する扁平上皮がん ・涙腺がん |
16回 |
肺がん | ・原発性非小細胞肺がん ・オリゴ転移の転移性肺腫瘍 |
1~16回 |
食道がん | ・根治手術や切除不能な食道がん | 12回 |
リンパ節転移 | ・深頚部リンパ節 ・胸部リンパ節 ・腹部リンパ節 ・骨盤リンパ節 |
12回 |
肝臓がん | ・かん細胞がん ・肝内胆管がん ・転移性肝がん |
4~12回 |
腎臓がん | ・腎細胞がん | 12回 |
膵臓がん | ・膵がん(膵管がん) ・腺房細胞がん ・神神経内分泌がん |
12回 |
大腸がん | ・大腸がん術後骨盤内再発 | 16回 |
子宮がん | ・局所進行性子宮頚部腺がん | 20回 |
前立腺がん | ・局所進行性前立腺がん | 12回 |
骨軟部腫瘍 | ・根治手術や切除不能な骨軟部腫瘍 | 16回 |
参考:重粒子線で治療できるがん|大阪重粒子線センター
最先端のがん治療まとめ
近年のがん治療には、光免疫治療や免疫チェックポイント阻害薬「オプジーボ」、重粒子線治療など、最先端の治療方法もあり、治療が難しいがん治療も可能となりつつあります。
しかし、どんながんでも治療できるわけではなく、適用されるがんの種類を知り、適切な治療を受けることが大切です。
いまこの時も、がん治療に対する臨床試験が進められているため、どんな治療法があっているのか知りたいときは、無料で相談できる「免疫ラボ」で専門家に相談してみましょう。
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